Valentine's day kiss黎深&百合姫

 

Valentine's day kiss  黎深と百合の場合

 

「黎深、これ。バレンタインデーだから。」
 
唐突に差し出された箱に、黎深は瞠目する。そうして箱を開け、呆れたように言う。
「なんだ、これは。どこの店のものだ?こんな不揃いな。」
その言葉に百合は、むっとしたように答える
「仕方ないだろ。手造りなんか初めてなんだから。」
「つまり、お前が作ったということか?」
「秀麗ちゃんが、そのほうが黎深も喜ぶからって、教えてくれたんだ。」
黎深は先日の事を思い出す。つまり、自分のため、わざわざ外で、秀麗の教えを請うたということか。
「その心意気だけは褒めてやろう。」
「なんで、ありがとうって言えないかな。」
むくれる百合に、黎深は答える。
「足りんな。これだけで喜ぶとでも思っているのか。」
「これ以上何が欲しいっていうのさ。」
「言わずとも分かるだろう。」
これ以上騒ぐなと、唇をふさがれた。
 
翌日、やっぱり手造りなんかしなきゃよかったと言う百合の顔には、言葉と裏腹の幸せがあふれていた。