Valentine's day kiss 静蘭&十三姫

 

Valentine's day kiss 静蘭と十三姫の場合

 

 
 
「これ、あげるわ。」
 
そっぽを向いて差し出した小さな箱。
横顔でも、朱に染まった頬は、きっとばれているに決まっている。その証拠に、夫の口元に意味ありげな笑いが浮かんでいる。
「なるほど、女性陣で、レシピの交換会をしたんですね。」
貴女の事など何でもお見通しですよ、という夫の笑顔が悔しくて、十三姫はつい言ってしまった。
「私の事が心配で心配で付いてきてくれたのよね?旦那さま。」
むきになってしまうのは、今日だけはやめようと思っていたのに。秀麗ちゃんなら、素直にそうよと笑ったかしら?お互いに一番じゃなくていいという約束だったけど。あなただけが一番になって、私は二番のままなんて、不公平よ。
そんな気持ちも全部彼には、分かってしまうのだ。そうして、全て分かって、私の欲しい言葉をくれる。
「ええ、愛する私の姫。」
「やっぱり、不公平だわ。」
いつもの意地悪な笑顔じゃない、そんな蕩ける様な笑顔をもらったら、これ以上何も言えないじゃない。
「確かに。私ばかり貴女の事を思って、不公平ですね。」
そういうと、これで釣り合うでしょうと唇をふさがれて。
やっぱり言わずにはいられない。
 
「静蘭のばか。」
 
本当は私の気持ち、分かっているくせに。悔しいから、私からは絶対に言わない。