Valentine's day kiss 楸瑛&珠翠

 

Valentine's day kiss 楸瑛と珠翠の場合

 
 
 
机の上に置かれた小箱。それを見つけた楸瑛は思わず破顔する。今日が何の日かなんてわかっている。
妻がちらりとこちらを見ている。その様子を覚られまいとしている様子すらも、愛おしい。
素知らぬふりでお茶を飲んでいる妻を、後ろから抱き締める。
 
「珠翠殿、ありがとうございます。」
「別に。秀麗様に誘われて、一緒に作っただけですから。」
ついでです、と強調する様子が、悔しくて、ついいじめたくなってしまった。
「つまり、これは、珠翠殿の手造りなんですね。ありがとうございます。」
「だから、別に特別とか、そういうことではありませんから。」
「私にとっては特別です。」
楸瑛がそう言うと、珠翠は黙ってしまった。
「珠翠殿、耳まで真っ赤ですよ。」
「あなたと結婚したことは、私の人生の最大の不覚です。」
「でも、あなたと結婚したことは私の人生の最大の幸福ですよ。」
だからもう、離してあげません、そう囁くと楸瑛は妻の頬に口づけた