snowflake

 

Snowflake
 
 
冷たい空気が頬に触れ、絳攸は覚醒した。
 
無意識のうちに隣にあるはずの温もりを探す。
 
だがしかし、伸ばした手は敷布と掛布の間を彷徨うばかり。
 
急に不安になり瞼を開く。
 
 
 
隣に眠っていたはずの妻は、窓辺から外を眺めているようだった。
 
「秀麗?」
 
呼びかけに振り向いた妻。その姿を見た刹那、息をのむ。
 
淡い光の中微笑み佇む姿は、美しく、そして何処か儚げだ。
 
「絳攸さま、夜の間に雪がこんなに。」
 
庭を眺めていたらしい妻にそっと近づき、背中から抱きしめた。
 
「確かに秀麗だ。」
 
唐突とも思える絳攸の言葉に、妻はただ、少しだけ首をかしげている。
 
腕の中の温もりを確かめるように黒く艶やかな髪をゆっくりと指で梳く。
 
起きたばかりでも、ほとんど癖もつかず、まっすぐなこの髪はまるで妻の内面を表しているかのようだ。
 
黙ったままの夫に流石に疑問に思ったのか、小さな声で名前を呼ばれる。
 
「絳攸さま?」
 
「すまん、消えてしまうのではないかと思ったんだ。」
 
雪の精のように見えたからと、続ける絳攸に、腕の中の妻は向きなおり、絳攸の背中に手を回す。
 
「私はここにいます。私が帰る場所はこの腕の中です。」
 
恥ずかしそうに顔を伏せながらも、どこにも行かぬと告げられた。
 
そんな様子が愛しくて。
 
二人で暖まろうと妻を抱き上げ、再び寝台に向かう。その腕の中、妻がそっとささやく。
 
「わたし、冬が好きになりました。だって、こうして二人でいることを感じさせてくれるから。」
 
 
 
いつもはそろって早起きの主夫婦が、その日に限ってなかなか臥室から出てこなかったことを知るのは、
 
 
住み込みの数人の家人だけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき、という名の言い訳。
 
起きたら雪が降っていたので衝動的に書きました。
 
一面雪が積もってそこに光が当たるととても幻想的ですが、
 
降りたての美しさは長くは続かない。
 
その儚い美しさに絳攸の不安を投影したつもりです。
 
秀麗は結婚してもばりばり働くと思うので、
 
あっちこっち飛んで行ったり、周りは男ばかりだったりと、
 
やっぱり旦那様は少しくらいは不安になるのではないかと思います。
 
その分、公休日には独占して仲良くしてほしいな。
 
小鈴のなかの絳攸さまは、結婚したら結構甘えたさんです。
 
 
BoAちゃんのメリクリを聞きながら書きました。
 
もっと好きな人強く抱きしめなさいと雪は降るの という歌詞が大好きです。
 
2010年2月6日 小鈴
 
 
 
 
 
 
追記:李姫(すももひめ)管理人の彩雲大好き様に気に入っていただき、もらっていただきました。
    雪つながりで、snowdropという作品を置いていらっしゃり、希望の持てる素敵な作品ですのでそちらもぜひご覧ください。