あなたとの不毛な関係
1.本気じゃないと知っていた(静蘭←十三姫)
2.たったひとつの約束もない(楸瑛→朱翠)
3.甘い刹那をもう一度だけ(黎深←百合姫)
4.この温もりさえ嘘なんだ(静蘭→十三姫)
5.それでも愛していたかった(劉輝→秀麗)
それぞれの片思いの気持ちを5題で。
不毛なので、暗かったり切なかったり。
苦手な方はまわれ右です。
あなたとの不毛な関係5題
1. 本気じゃないと知っていた(静蘭←十三姫)
あなたと私の結婚は、利害関係の一致。
愛し愛されることは望まない、それでいいという約束。
だってあなたの心には、ずっと住んでいる人がいる。
慈しみ育んでだ、彼女との時間。
それがあなたの宝物。
それを私は知っていた。
それでもいいと望んだのは私。
それなのになぜ?
境界を踏み越えたのは私?それともあなた?
気付いた時にはもう手遅れ。
あなたを私の中から追い出すなんてもうできない。
世にも美しいその唇。
紡ぎだすのは優しい嘘。
貴女が望むなら何でも叶えてあげましょうと。
そんな優しい嘘は嫌い。
だって一番欲しいものは、私のものにはならないもの。
そんな優しい嘘が憎い。
その頬笑みの穏やかさが、私の心を波立たせる。
渦巻く苛立ちをぶつけた時すら、あなたは笑顔で受け流す。
そうして思い知らされる。
私をとらえておきながら、彼女を見ている酷い男。
それでもいいと囚われた。
せめて隣にいることに、しがみ付いている愚かな女。
それでもどうかこの籠の鍵は開けずに持っていて。
2. たったひとつの約束もない(楸瑛→朱翆)
貴方は蝶のような人。
私を評してそう言った。
けれどあなたは気付いてない。
本当の私の姿を。
確かに花園をはばたいた。
けれども休まる花はひとつ。
貴女の傍でこの心、休まるたったそれだけを。
貴女が気付いてくれたなら、羽根など捨ててかまわない。
本当は貴女こそが蝶。
魅惑的なその羽を、ひけらかす様に羽ばたいて。
その実愚かなこの枝に、止まる気などはさらさらない。
ただ一度でも訪いを、確かに約してくれたなら。
この世の果てまで待てるのに。
だから私は今日も舞う。貴女の周りをひらひらと。
3.甘い刹那をもう一度だけ(黎深←百合姫)
どこで間違えたのか、そんなことは今更どうでもいい。
抜け出せぬ沼と知っていながら、飛び込んだのは自分だから。
けれども一つ後悔をしている。
それは君の心に触れたこと。
知らなければよかった。
そうすれば逃げることもできたのに。
けれども知りたいと思ってしまった。
狡猾に張り巡らされた罠に、そうと知りつつも踏み込まされた。
その時点で私の負けは決まったから。
君は本当にずるい人。
時たま与えるその時を、待ちわびているこの私。
知っていながら知らぬふり。
心の触れ合うその時に、甘露な毒を忍ばせた。
再び甘露な夢を見たい、ねだることすら許さずに。
けれども時に気まぐれに、いともた易く差し出して。
触れれば触れるほど、今一度と希う。
気紛れで傲慢で残酷な、けれどこの世でただ一人私の愛する旦那さま。
4.この温もりさえ嘘なんだ(静蘭→十三姫)
貴方は何でも持っている、貴女は私にそういった。
ただ一つだけ希う、この心だけを無視をして。
愛し愛されることを、望まぬかわりに傍にいる。
それは約束だったけど。
いずれ私も愛される、かすかに託したその望み。
届かぬものと知りながら、それでもどうかと手を伸ばす。
その度毎に残酷に、到底出来ぬと知らされて。
そんな私を知らぬまま、そっと重ねる掌。
その唇が紡ぐなら、よしなしごとさえ仙女の樂。
そっと引き寄せ掻き抱く。
腕の中におさまった、細く小さなこの体。
その中にある心だけ、私に触れさせてはくれぬ。
そのただ一つだけを希うことを知らぬまま、今日も貴女は私に口づける。
5.それでも愛していたかった(劉輝→秀麗)
彼女が選んだのは自分ではなかった。
ただ、それだけのこと。
どこにでもある良くある話。
この手をもってすれば、彼女を取り上げることはたやすい。
この位をもってすれば、どんな女人も思いのまま。
それなのになぜ、彼女の心だけが欲しいのだろう。
なぜ手に入らぬと分かっていながら、これほどまでに惹きつけられたのか。
彼女がほかの男の前で笑うなど、許したくない。
誰の目にも触れぬところに閉じ込めて、彼女の世界を自分だけで満たしたい。
そうすればどんなにか楽になるだろう。
けれども。
そうすることで彼女を愛おしむことすら許されなくなる。
優しい笑顔を浮かべながらも、その実心は固く閉ざして。
他の誰でもない、彼女ならそうするだろう。
そうして抜け殻となった彼女にどれほどの意味があろうか。
だからみすみす見送った。
縋りつき閉じ込めたい気持ちを抑えた。
そうしてたった一つこの掌に残ったもの。
これだけは誰に咎められることもない。
これだけをずっと大切にしまっておくことにするよ。
あとがき、という名の言い訳
不毛という言葉に引き寄せられるように選んだこのお題。
とんでもなく苦しみました。
小鈴ドSだと思っておりましたが、ドMだったみたいです。
自縄自縛大好き。
自分の掘った落とし穴に飛び込みました。
今までは、たとえ片思いであっても、どこか本人が納得しているお話を書いていて、
悲壮感というのはあまりなかったのですが、今回は不毛ゆえ。
書いても書いても幸せになど成るはずもなく。どんよりしながら書きました。
そのわりに、静蘭×十三姫は実は両思いだし、黎深×百合もなんだかんだでうまくいっている。
そうすると残るのは、劉輝&楸瑛の人呼んで不憫コンビ。
劉秀派の皆様には申し訳ない限りですが、秀麗は絳攸のところへお嫁に行ったイメージです。そんな健気な劉輝がスキ。
