想像してください
 
※現代パロ  絳攸・楸瑛・秀麗は同じ高校の生徒です。
 
 
 
 
 
 
 
 
ある、春の日。
 
高校の保健室。
 
グラウンドには部活動に興じる生徒たちの声が響いている。
 
暖かく差し込む陽光が間仕切りのカーテンにうつしだす、二つの影。
 
そして聞こえてくる声。
 
「絳攸怖くないから、力抜いて」
 
 
緊張をほぐすように包み込む優しい声。
 
対する声は、心なしか震えている。
 
「しゅ、楸瑛、優しくして…」
 
「わかった。じゃ、いくよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「い、いたい、ちょっ。優しくするって、言った。」
 
「ごめんね。でもどうしてそこまで放っておいたの。」
 
「黎深さまが、舐めておけば治るっておっしゃったから。」
 
「乾燥した唇を舐めたら、もっと乾燥してひび割れるんだよ。」
 
「そう、なのか。」
 
「コレ、あげるから、使うといいよ。」
 
「?なんだ?」
 
「リップクリーム。さっきみたいに指にとって薄く塗っておくんだ。」
 
「甘い、においがする。」
 
「あぁ。苺とか桃の香りをつけたものが、ご婦人がたに人気なんだよ。」
 
「そう、なのか。じゃあもらっておく。」
 
 
 
翌日 
 
生徒会室
 
各部から予算折衝前で一番忙しい時期だ。
 
生徒会、予算担当委員の絳攸と秀麗の二人は、書類整理に追われていた。
 
二人の驚異的な事務処理能力を持って、粗方の目処は付いたころ。
 
「絳攸先輩、ちょっと休憩しましょうか?お茶入れますね。」
 
立ち上がった秀麗を、絳攸は呼び止める。
 
「秀麗、ちょっとこっち来い」
 
委員の先輩にして恋人の呼びかけに、秀麗は振り返る。
 
「?絳攸先輩、どうされました?」
 
「いいから」
 
絳攸は不思議そうにする秀麗を膝の上に抱き寄せる。
 
「俺には、お茶より、秀麗の方がいい」
 
絳攸の言葉に、意図を察した秀麗は頬を赤く染める。
 
「絳攸先輩、……ここ、学校です。」
 
「誰も見てない。誰か来る前に、はやく。」
 
大きな手で頭を優しく引き寄せられる。
 
二つの唇が、重なる、
 
はずだった。
 
絳攸の肩に強く当てられた細い腕、背けられた顔。
 
全力で、拒否されるとは思ってみなかった絳攸は、わけがわからず硬直する。
 
恋人が恥ずかしがり屋なのは知っていたが、今さらキスを拒まれることもないはず。
 
「…しゅ、秀麗?」
 
「……絳攸先輩、女の人の匂いがします。」
 
涙目で訴えられても、全く覚えがない。
 
「秀麗?俺は何の事だか分らない。」
 
「そんな甘い香りのリップクリームの女性とキスした唇で、私にもキスしようとするなんて……」
 
「だ、だから、秀麗?」
 
何の事だかわからない絳攸を置いて、秀麗は出て行ってしまった。
 
 
涙目で校舎裏を走っていた秀麗は、向こうから走ってきた人にぶつかってしまった。
 
「あ、す、すみません。」
 
「秀麗ちゃん?どうしたの?」
 
ぶつかった勢いで転びそうになっている秀麗を抱きとめながら楸瑛が言う。
 
「楸瑛先輩、こ、絳攸先輩がっ…」
 
絳攸の親友である楸瑛に先程の顛末を話した。
 
楸瑛は思い当たることがあったが、そんなことは秀麗に話してやらない。
 
「それで、秀麗ちゃんは絳攸の言うことも聞かずに飛び出してきたんだ。それって絳攸のことを信じていないってことだよね。」
 
ちょっと意地悪かなと思いながら言う。
 
楸瑛の真意に気付いたのか否かは不明だが、秀麗はきっと顔をあげると、
 
「戻ります」
 
と一言残して戻って行った。
 
 
その背中を見送りながら、楸瑛は一人ごちる。
 
「このくらい許しておくれよ。君は彼を手に入れたんだからさ。」
 
そのつぶやきは、誰にも届くことがない。届かせるつもりも、ない。
 
 
 
 
 
あとがき、という名の言い訳
 
保健室のシーンだけできていて、えらくBLくさいな~と思ってクイズにしました。
コメ下さった方ありがとうございました。
 
皆様のコメに妄想力が掻きたてられて、萌え萌えパワーを補充させていただきました。
 
マッサージ説が多かったですが、皆様結構……。
 
またこういった企画を考えたら皆様ご参加くださいね☆
 
 
 
 
 
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