罪と罰 後
 
 
 
 
 
 
「その、単なるいたずら心だったんだよ。まさか秀麗殿が信じるとは。」
 
「なんだ?もったいぶらずに早く話せ。」
 
「15年前の、今日。つまり4月1日にね。秀麗殿にちょっと悪戯をしたんだよ。」
 
「悪戯?ま、まさか秀麗、この常春に何かされたのか?」
 
結婚して10年以上たつのに未だに新婚のような友人夫婦。
絳攸は本気で心配したように楸瑛に厳しい視線を向ける。
 
「悪戯といっても、ちょっとからかっただけで。
この日は嘘をついていい日だからちょっとした出来心で。
まさか、秀麗殿が本気にするとは、思わなかったんだよ。」
 
「だから、なんのことなんだ?」
 
妻の身を案じてか、絳攸の言葉は冷たく厳しい。
 
「その、君と私がね、こ、恋人同士だと。」
 
「………、はぁ?お前そっちの趣味もあったのか?
だとしても俺を巻き込むな。それに秀麗、し、信じたのか?」
 
絳攸は秀麗がその話を信じたということの方が、信じられないようだった。
 
「だって、絳攸さまのことをお慕いしておりましたのに、全く相手にしていただけなくて。
それに、仮の貴妃で後宮に入ったときには、
絳攸さまが女官になびかないのは楸瑛様がいるからだと、専らのうわさでございましたし。
もちろん、今は嘘だとわかっておりますけれど。その時は……。」
 
思い出しては悲しくなってきた様子の秀麗をそっと抱きよせ、
髪を撫でて慰めながら、絳攸は楸瑛に向かって言う。
 
「お前、秀麗をこんなに悲しませてただで済むと思うなよ。」
 
「だ、だから、悪かったよ。秀麗殿に限って騙されるとは思わなかったんだよ。」
 
必死で言い訳する楸瑛だったが、友人夫婦はもはや楸瑛の言葉など耳にも入らぬ様子で。
 
「俺だって、あの頃から本当は秀麗のことが好きだったんだ。
だけど、どうしていいかわからなくて。
だけど、昔も今も俺には秀麗だけだ。もちろんこれから先もな。」
 
「絳攸さま、私も絳攸さまだけをお慕いしております。」
 
うっとりと見つめあう二人は、完全に夫婦の世界に入っている。
 
辞去の挨拶も届いたのかわからぬままに、楸瑛は絳攸の屋敷を後にした。
 
 
 
 
 
 
家に帰ると柏鶯が出迎えてくれた。
 
「お父様、さっきの私の言葉、お信じなったの?」
 
「……、信じたわけじゃないけど。考えたくもなかった。
私の柏鶯がどこかに嫁いでしまうだなんて。」
 
「私、行かず後家は厭よ。」
 
「わかっている。わかっているけど。」
 
「でも、もう少しだけ、お父様の傍にいて差し上げることにするわ。」
 
そう言うと柏鶯は、珠翠の手伝いがあるからと奥に入ってしまった。
その背中を見ながら、喜びと切なさの両方をかみしめた楸瑛だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき、という名の言い訳
 
エイプリルフール合わせで、書いてみました。
新刊の発売日だというのに……。
これを無事にUPしたら、新刊に手をつけます。
と言いつつ読んでしまった。。。
15年後ということは楸瑛はアラフォー?
たぶん楸瑛様はいつまでたっても素敵だと思います。
でもちょっと娘への愛情が、黎深的な気もする。
絳攸さまは年をとるごとにどんどん甘くなっていくのだろうな。
一番の心配は、書いた時に新刊を読んでいないので、李姫とか楸珠とかあり得ないし、的展開が原作で発表になっていたらどうしようということ。
その場合は、二次は二次として割り切ってまた書きますとも。
最近だんだん何かが進んできて、李姫と静十は固定だとしても、楸瑛の相手は小鈴でいっかと思うようになってきました。
末期な気がします。
進行早かったなこの病気。
いや楸珠は楸珠で好きなのですが。
少なくとも珠翠似の娘を捏造するくらいには好きです。ただ、成長してちょっと十三姫にも似てきた感は否めません。
 
 
 
 
 
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