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なにかと未来捏造です。
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繊月:第十四話
今日も吏部は忙しい。
そんな中、定刻にいそいそと退出していく尚書を目の端で追いつつも、侍郎はそっと息を洩らす。
どうせ尚書の机の上にあった山のような書類はすべて綺麗に片づけられている。
そうであれば、文句など言えるはずがないのだ。
彼はもう一度小さく息を吐きながら、そっと眼鏡を押し上げた。
はやる心を抑えきれずに軒に揺られ帰宅した吏部尚書を出迎えたのは、彼の息子であった。
「父上、お帰りなさいませ。」
「泉俊、秀麗は、今日戻るのだったか?」
その言葉に、息子の顔が少しだけ曇る。
「…それが、先ほどお帰りになったのですが、
荷物を置いて夕餉の支度をした後に、報告をしに参内されました。」
「そうか、入れ違いになってしまったか…。」
あからさまに落胆する父に苦笑しながら、泉俊は話を続ける。
「夜半には必ず帰宅するから、食事は先に三人で済ませてほしいと仰っていました。
今、姉上が準備を整えてくださっています。」
息子の言葉に少しだけ安堵して、着替えるために、自室へと向かった。
夜半。妻の声で目が覚めた。
どうやら彼女の帰りを待つ間、本を読もうと思って机で居眠りをしてしまったらしい。
窓の外を見れば、彼女を見送ったときと同じ、望月。
この月が二度欠けて満ちる間、彼はずっと独り寝を強いられたのだ。
「絳攸さま、このようなところでお休みになっては、お風邪を召されます。」
「でも、今日は帰ると泉俊に言っただろう?」
「えぇ、夜半になるから先にお休みになってくださいと伝える様に言ったはずですが…」
それは聞いていない、と思いながら、
自分の顔を見て言えなかったのであろう息子の心情も理解できた。
「秀麗のことなら、いつまででも待つと、言っただろう。」
そう言いながら、細い腰を抱き寄せる。
「お帰り、秀麗。」
「絳攸さま、ただ今戻りました。」
そして、そっと合わせた唇が離れた後、恥ずかしげに耳元で囁かれた言葉。
「抱いて、くださいませ。」
その言葉に絳攸は少し笑うと、妻の体を抱き上げて寝台へ向かう。
普段はそんな事を言う妻ではない。
内偵のためとはいえ、二月も家をあけたことを気に病んでいるに違いない。
「言われなくても、そのつもりだ。」
明日は、公休日。
二月分の時間を取り戻すには少々不足だが、それでもたっぷりと妻を愛することはできるだろう。

あとがき、という名の言い訳
長い、長いよ小鈴。
最後までお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。
まずは、タイトルのお話。
繊月とはその名のとおり、繊維のように細い月のこと。
朔の月と三日月の間ですね。
二日月というと味気ないですが。
幾望を書いたときに、月の名前を調べて、
新月に近い生まれたてのこの月の名前もいつか使いたいと思っていました。
書いてみて、使い方が、わざとらしい。。。
もっとうまく書けるようになりたいです。
お付き合いさせていただいているテキストサイト様の多くは、
数ページずつ書いてUPされていらっしゃる方も多いようですが、
私の場合は、完成したものを分割して小出しにしております。
というかそれしかできない。
今回もいったん書き上げた後、最初のほうをいじったりしました。
ただ、その分書いているときには誰の反応もなく孤独な作業です。
今回は特に前半の内容が内容だった為に、
こんな絳攸もこんな秀麗も、誰も読みたくないんじゃないかな?とびくびくしておりました。
後半に入ると、今度は裏ページなのにそういう展開がないままだらだら続いて、
期待はずれじゃないかな?とびくびくしました。
びくびくしながらも納得したからUPしているのであって、恥じるところも、後悔もありません。
下手な文章ですけど、自己ベストであれば、現状私にできる事はこれ以上ないので仕方ありません。
これからも精進を続けますので、よろしくお願いします!
と、言うわけで、自分がびくびくしているチキンな小鈴は、
連載されているサイト様に、過剰に愛を送ってしまう傾向にあります。という言い訳。
しかし、最近小鈴の書く未来の絳攸は黎深化する傾向が激しいです。
多分、絳攸は紅家の人間です!というのをとにかく主張したいから、だと思います。
未来の吏部侍郎サンは、自分が侍郎であることに喜びを感じていると良いなと思います。
そして以前から評価している「嫁としての資質」だけでなく「官吏としての資質」も評価されていると良いな。
彼の話は彼の話でひとつ温めている物があるので、いずれ形にしたいです。
最後までお付き合いくださった方、ありがとうございました。
2010年5月4日 小鈴
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