天の川の向こう側

 

RoseGarden(master:椿鬼さま)にてフリー配布の七夕もの。 劉秀ですが、あまりに素敵だったので、頂いてまいりました。

 

 

 

 

□天の川の向こう側



年に一回しか会うことを許されない恋人たち。いつもは天の川に邪魔をされて、会うことは出来ない。


まるで私と秀麗みたいだ、と劉輝は思った。


静蘭たちには秘密で秀麗に手紙を送った。いわゆる逢引きというやつである。もちろん、静蘭たちにはバレバレだったが、たまには良いだろうと甘やかす。


これがバレたらまた黎深様にしめられる、とごちる絳攸ではあったが、表立って応援などしないが、二人には幸せになってほしい、と思っていた。


以前、出会った桜の木の下。逢引きといえば自然とこの場所になっていた。未だ、官吏を続けている秀麗は眠い目をこすりながら、重い体を引きずってきた。


「秀麗、今日は何の日か知っているか?」 
「え。え、えーと野菜の安売り、とかかしら?」
「……うむ、予想外なのだ」
「何がよ、もう」
「今日は七夕だぞ?」


女の子なら知っているのでないか?と劉輝は問う。けれど秀麗としては徹夜が連日と続いたために、今日が何日か、なんてわからない。


「七夕の日くらい会えたっていいと思うのだ」
「そりゃ、年に一回だものね」
「私だって寂しいのだ」
「彦星さんも寂しく感じたのかしら」
「……あの、秀麗」
「うん?どうしたのよ、変な顔をして」


仕事以外ではなかなか会えないから、七夕みたいに会える日があったりしてもいいじゃないか、と伝えてみたものの不発に終わる劉輝。
天然で鈍感な秀麗には、変化球なんて効かない。


「う……秀麗さん」
「なんで、さん付け?」
「私はもっと秀麗に会いたいのだ、たまに、なんて足りない。いつもとは言わないから、だから」
「っ……私だって」


真面目な顔をして秀麗の頬を撫でながらいうと、夜空には雲一つなく綺麗な天の川が輝いた。秀麗は悲しいような顔をして、劉輝の服を掴んだ。あと少しでお互い抱きしめあえるのに、ただ秀麗は劉輝の胸元に額を押しつけるだけ。


「傍にいたいのは私、だっ、て」
「それならいいのだ」
「良くないわよ、あんたねえ、泣きそうな顔しないの」
「泣いてなんかいないぞ。それに」


秀麗だって目が真っ赤だ。と劉輝が悪戯っぽく笑いながら言えば、恥ずかしいのかすぐにそっぽむいた。それからそのままの表情でぼそぼそと、つぶやいた。


「たまになら逢いに行ってあげるわ」


満足げに微笑んだ劉輝はぎゅうと腕のなかに閉じ込めた。珍しく甘えるように伸ばされた腕が、抱きしめかえしてくれて劉輝はまた頬を緩めた。


天の彦星と織姫は、私と同じようにしているのだろうか、と劉輝は思い出したように思った。


(逢うまでの時間は長けれど、傍にいられる時間はとても短い)


END

(2010/07/07) RoseGarden/椿鬼さま作品

 

 

 RoseGarden椿鬼さま、ステキ劉秀をありがとうございました。

RoseGardenさまでは、劉秀だけでなく、いろいろな人に愛されている秀麗ちゃんが読めて、お得気分です。

私のお勧めは静蘭×秀麗の微妙な距離感。

ぜひぜひRoseGardenさまにてご堪能くださいませ。

2010/07/12  小鈴