キミはケータイ<静蘭編>
どうして、私があなたのケータイなんでしょう?お嬢さまではなくて、あなたの…。
わかるように説明してください?と、何度も何度も腰を低くして聞いていると言うのに、彼は
「知らん!!」
の一点張りだ。……フン、それでも宮廷随一の才人か?と言いたくなる。
ああ、失礼しました。私は静蘭、いえ、
彼、李絳攸のケータイです……。
認めたくはありませんが…‥。
本来ならば、お嬢さま、紅秀麗さまが私の持ち主になるはずであったのに、何の手違いなのか、こんなことになっています。
本当に、この迷子が大切なお嬢さまの恋人だ、ということだけでも許し難いと言うのに、あろうことかこの私が、下僕のようにあれこれと迷子のために尽力しなければならないとは…。
屈辱以外の何ものでもありません。
かくなる上は、この迷子がお嬢さまに対して無体なことをせぬように、しっかりと監視をしなければ。また、お二人がコミュニケーション不足に陥るように、電波傍受のアンテナも最低レベルにして、あわよくば、お嬢さまにこのお付き合いを考え直していただきましょう!
……万が一、そう。万が一にも、迷子がお嬢さまに対して不埒な行いなどしようものなら、彼の生命線であるりくナビは接続不能にしてやりますから。
全く、絳攸どの。だいたい、側近のクセに劉輝さまを差し置いてお嬢さまと交際するなど…。呆れてものがいえませんよ?
こうした私の徹底した方針、いや、作戦の効果か、近頃のお二人の会話は少ないようなのです。
"我、作戦成功セリ"
と密かに喜んでいたのですが、それが裏目にでてしまったのです。
一人の人物の電話によって…。
「ちょっと!!李絳攸サン?」
とかけてきたのは、藍家の十三姫さまでした。
ん?十三姫?
………。
…絳攸どの?なぜあなた宛に十三姫からの着信があるのですか!どういうことでしょう?きっちりと納得のいく説明をしてください?と詰め寄るも、
「そんなことはオレが聞きたい!!」
と言うばかり。
今は私がお尋ねしているのですがねぇ?
後から思えば、なぜ十三姫から迷子に電話が?とそちらに気をとられていたのが間違いだったのです。迷子は…、十三姫にひどく怒られているようでした。
会話が終わり、しばらく黙って立ち尽くしていた迷子が、
「秀麗が、…秀麗が泣いているらしい。俺がなかなか電話を取れなかったから。」
と、一目散に走って行ったのです。
極度の方向オンチである持ち主が、珍しく迷わずにたどり着いたのはお嬢さまのお宅。
「スマン、秀麗。言い訳するわけではないんだが、最近ケータイの電波の調子が悪くてな。取ろうとする寸前でとれなかったりで。悪かった、不安にさせて。ケータイに頼らず、もっと早くこうやってお前に会いに来ればよかったんだ…。」
「絳攸さま…。いいんです。私の方こそ絳攸の気持ちを疑ってしまって…。」
「秀麗。」
「絳攸さま…。」
こうして二人の絆は強まり………。
私は仲睦まじい姿を見せつけられることになってしまいました。
この私としたことが、…不覚でした。
二重の屈辱ですが、致し方ありません。二人の仲を認めましょう。この私を向こうに回した迷子の度胸に免じて。
今回は私のせいだったこともありますが、お嬢さまの涙は見たくありませんし。
ただし、お嬢さまを泣かせるような事があれば、即刻態度を改めさせていただきますから、そのおつもりで…。
あぁ、それから絳攸どの。十三姫とは必要以上に仲良くなさらないように…。
お二人の仲は許せても、こちらに関してはとても癪に触るのですよ?
「だから、どうしてそうなるんだ!?俺はこっぴどく怒られたんだぞ!?」
迷子がなにか怒鳴っているが、知ったことか…。
二人が絆を深めたのは、ケータイが密かに想う愛しき姫のあの言葉。
"秀麗ちゃんが泣いてるわ!!どんな理由であれ、女の子を泣かせるなんてサイテーよ!?
今すぐ、いい?い、ま、す、ぐ、よ!?秀麗ちゃんに会いに行って!!わかったわね?"
そして、ケータイと持ち主の"ゼッタイに負けられない戦い"はまだまだ続くのであった。
END
すみれさまの、腹黒セクハラかわいい静蘭にいつもいつもめろりんきゅうな小鈴です。
あんまり可愛いので、おねだりして貰っちゃったんだモン。
すみれさま、ありがとうございました。
すみれさまのサイトは、豊富なパロディから、シリアスな○○絳攸さままで幅広く萌えを提供してくださっています。
私、出先ですみれさまのサイトを見るときは、必ず気を引き締めてから見ることにしております。
だって絶対顔がゆるむから!
ピンクの携帯持ってにへら~としている変な人を見かけたら、それは私かもしれません。
携帯ちゃんは静蘭のほかにもいろいろな機種(?)を取りそろえていらっしゃいますので、ぜひぜひStray Sheep様 でご堪能くださいませ。
2010/070/23