名前を呼ばないで
 
 
 
 
片恋ゆえに拒否 
 
 
 
 
 
 
 
4.    名前を呼ばないで
 
 
 
 
あなたはいつも厳しい人。
 
そして誰より優しい人。
 
あなたはとても賢い人。
 
けれど時々鈍い人。
 
例えばあなたが差し向けるその優しさの残酷さに気付かない。
 
あなたはいつも私の名前を呼ぶ。
 
その行為の意味など考えもせず。
 
あなたはいつも私を縛り付ける。
 
たった一言名を呼ぶだけで。
 
その瞳で真っ直ぐ射抜いて、私が逃げることを許さない。
 
秀麗、ここまで登ってこい。
 
秀麗にしか、できぬ事。
 
あなたが私の名を呼んで、そうして発する一言が、私の道を決めていく。
 
そうして易々先をゆく。
 
あなたはとてもずるい人。
 
私がくじけそうになったとき、ようやく私を振り向いて、そうして私の名前を呼ぶ。
 
秀麗、お前ならできる。
 
あなたはとてもずるい人。
 
そうして私を縛ること、それが私を強くする、そのことさえも気付かずに。
 
いともたやすく口にする。
 
秀麗だから、期待する、と。
 
あなたはいつもやさしい人。
 
いつも笑顔で待っている。
 
いばらの道のその先で、駈けておいでと手招きし。
 
一寸先も闇の中、ここまでおいでと誘う声。
 
私の名前を呼ぶことで、いつも私を導いて。
 
私の名前を呼ぶことで、いつも私を傷つける。
 
あなたの瞳にうつるもの、それは弟子としての私。
 
傍にいられるただ一つの理由、それは優秀な弟子であり続けることだけ。
 
だから私は駈けて行く。
 
いばらの道も、冬の岩山も。
 
その先にあなたがいるならば、そんなものは苦にならぬ。
 
私をとらえて離さない、私の名を呼ぶ甘い声。
 
 
 
 
 
 
 
            5.期待させないでへ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 小鈴に感想を送る
 
 
 
お題TOPへ
 
   小説TOPへ
 
 
案内板へ