My Sweetie
「ねぇ絳攸、何でこんなことになったんだろう?」
「…お前のその口が、いつもながらに軽はずみなことを言ったからだろう。」
「そこ!何をしている。騒がしいぞ。本当に教えを請う気があるのか。」
飛んできたのは、殺気。
その態度は傲岸不遜そのもので、間違っても主家の娘婿や妻の兄に対するものではない。
そして鋭い視線の奥底に心なしか浮か、楽しむような光。
獲物を甚振る豹のようだ。
そしてこの場合、獲物とはもちろん、絳攸と楸瑛を意味する。
文官武官として、それぞれそれなりの場数を踏んでいる二人の背中にも
冷たいものが流れ落ちていくのを止めることはできない。
なぜ、この二人が飛んで火に入る夏の虫の様な事をしてしまったのか。
ことは三日ほど前に遡る。
絳攸と楸瑛は、劉輝の執務室からの帰りいつものように世間話に興じていた。
「そういえば絳攸。ホワイトデーはどうするんだい?」
「……ほ、ほわいとでー?」
何だそれはと目で問うてくる友人に、楸瑛は頭を抱えた。
彼の妻である秀麗の苦労が図り知れるというものである。