幾望 6
軒に揺られ着いたのは、広大な屋敷。その離れが彼の住処と案内される。
「若様、お湯の用意は整っております。」
「わかった、ありがとう。」
家人らしき女性にそう返事をすると、絳攸は秀麗を抱き上げて、歩き始めた。
「え、ちょっちょっと絳攸さま。」
わけがわからず尋ねる秀麗に絳攸は、事もなげに答える。
「湯を使うぞ。俺が洗ってやる。」
「ななな、こうゆうさま。」
「なぜ湯を使うのかということか?」
もう返事をすることすらできず、ただ頷くことしかできない。
「決まっている。あの常春のつけた垢を落とすためだ。
だから俺が洗うんだ。嫌だといっても、秀麗に拒否権はない。」
そう言って向けられた笑顔は優しく、美しい、…のに怖い。そう戸惑っている間に湯殿についた。
絳攸はまじめな顔をして聞いてくる。
「秀麗、衣を脱がせてやろうか?それとも自分で脱ぐか?」
そんな、当たり前のようにおかしな二択を迫られても…。
そう思いながらも、今の絳攸に逆らえるはずもなく
「……自分で脱ぎます。」
そう答えた秀麗だった。
広大な屋敷な屋敷は湯殿まで広大だった。
二人で入っても余裕があるほどに。
そんな湯殿の中の秀麗の肌が赤く上気しているのは、湯の温度によるものだけではない。
「…、こ、絳攸さま、恥ずかしいです。」
「じゃあ、恥ずかしくなくなるまで、何度でも一緒に入るしかないな。」
その声は秀麗の耳の真横から発せられる。
つまり、二人は今現在同じ湯船につかっており、
秀麗は絳攸の両ひざのの間に背中から抱きかかえられるようにして座っていた。
背中に密着する絳攸の体は、細いながらも筋肉質で、
女性との違いを感じさせ、そのことが一層秀麗の羞恥心を煽る。
これ以上恥ずかしくなったら死んでしまうかもしれない、そう思ったのに。
「秀麗。こっちを向いて。」
絳攸の声に、首を振り向かせると、そうではないと言って、お湯の中で体を反転させられた。
絳攸の腿に跨るように座らされ、これでは全てが見えてしまうと思わず手で覆う。
しかし。
「秀麗、手を取って全部見せて。」
切ない目をしてそう言われると、つい従ってしまう。
その手の下に隠していたもの。
同年代の女人と比較して小ぶりな乳房もそうだが、それよりも、楸瑛によって刻まれた刻印。
これを絳攸に見られるのだけは避けたかったのに。
絳攸は秀麗の白い肌の上に散った赤い花びらを見遣ると、ふんと笑って言った。
「秀麗。ここに汚れが付いている。俺が綺麗にしてやろう。」
そう言うと、鬱血の上に舌を這わせ、その跡を消すように強く肌を吸われる。
唇を離した絳攸は満足げに、
「これで一つ綺麗になった」と笑い、
次の鬱血へと舌をのばす。
頭がぼうっとするのは、心地の良いお湯のせいか、それとも絳攸によるものか。
秀麗は羞恥心と心地よさの間を行ったり来たりしていた。
「次は、ここだな。」
そう言って絳攸が舌を伸ばしたのは、秀麗の胸に二つ熟した果実の片方だった。
「これはなかなか取れないな」などと言いながら、舌で転がされ、吸い上げられる。
その間にも、もう片方の果実にも絳攸の指が伸びてきて、摘み上げられる。
感じたことのない快感に、秀麗の体は痙攣したようになる。
鼻にかかったような、自分でも聞いたことのない甘い声が漏れ出て、湯殿の中にこだまする。
「家人が何事かと心配するから、あまり可愛い声を出すな。」
そう言うと絳攸は、自らの唇で秀麗のそれを塞いだ。
胸の果実を愛しんでいた指も離れ、秀麗もようやく呼吸を整えることができる。
そう思った瞬間に、絳攸の指は新たな悪戯を始めた。
太ももの奥に咲く、誰にも見せることのない花。
その上に一粒隠れた小さな果実。
絳攸はそこに指を伸ばすと、ゆっくりとこすり始める。
そのような場所があることすら知らなかった秀麗に取って、
背中に駆け上がる快感には恐怖も伴う。
嫌嫌というように首を横に振りその感覚に耐える。
そんな秀麗を見ながら絳攸は独り言のように言う。
「不思議だな。触っていると段々と膨らんでくるぞ。」
そう言いながら果実を守る房を剥かれ、
芯をつまみ上げられて、高く一声鳴いたあと秀麗は気を失った。