ヒトゴーゴーマル、事件発生。
犯人は大胆にもマル被に正面から接触すると、そのまま腕を引き強引に車に押し込むとそのまま走り去った。
その際近くにいた目撃者の一人に伝言をするという大胆さだ。
ヒトロクイチマル、目撃者確保。
目撃者の青年は語った。
「どちらの女性のことから話せばいいのかな?
え、連れ去った方?
連れ去った方はね、背の高い美人だったね。
長い髪を一つにまとめて、トレンチコートが良く似合っていたね。
あれはかなりの美人だねぇ。
サングラスをしていたけれど私にはわかるよ。
見た感じかなり若々しかったけど、でもあれは年上だね。
そんな感じの色気があったよ。
そうそう、君に伝言を預かっているよ。
えーと、
『いつまでも独占して紹介してくれないのが悪いのよ。
返してほしかったら、あの場所に来ること。
それまでは私に付き合ってもらいます。』だそうだ。
美女からのお誘いなんて、君もなかなかやるねぇ。
ちょ、痛い、痛いよ絳攸、そんなにたたかなくてもいいじゃないか。
秀麗ちゃんが心配なのはわかるけど、こんな伝言していくということは、君の関係者だろ。心配いらないのではないかな?
え、探すのを手伝え?だって場所は分かっているんだろ。…、なるほど、道案内させていただきますよ。」
目撃者こと藍楸瑛は、取り乱す自称“鉄壁の理性”にして親友(相手に言わせると腐れ縁)の李絳攸を落ち着かせようと肩を叩く。
「ぁぁぁぁ、ああ、そうだ。
秀麗が一緒にいるのはたぶん、あの方だから、大丈夫だが、今日あの場所にというのが厄介なんだ。とにかく行くぞ。」
言葉だけは勇ましいが、全く足が動いていない。
動かないことが最短の手段と本能的に理解しているのだろうか。
そんな絳攸を連れ、取り巻きの女性たちに別れを告げると、楸瑛は自分の車へと向かったのであった。