「柔らかいな、いつまででも触っていたくなる。」
思ったままを口にした絳攸だったが、秀麗は頬をいっそう赤く染める。
「そんな、恥ずかしいこと、言わないでください。」
「そうか?だが本当のことだぞ。」
そういいながら唇をよせて、柔らかなふくらみを味わうように舌を滑らせていく。
二つの膨らみを片方は手のひらでゆっくりと揉みしだき、もう片方は唇で味わう。
それを交互に繰り返しているうちに、秀麗の目はとろりと潤み、
腿をすり合わせるように身をよじりはじめた。
やがて絳攸がふくらみの頭頂部に舌を這わせる。
「っひゃっっうぅ。」
初めての刺激に秀麗の体は大きく跳ね、
口からは自らでさえ聞いたことのないような甘い声が漏れ出る。
その淫靡さに秀麗自身が驚き、潤んだ眼で絳攸を見ながら訴える。
「こ、こう、ゆうさま、私、なんだか、変……。」
その様子に片方の手は愛撫を続けながら、
もう片方の手のひらを秀麗の頬に添えて絳攸は言う。
「変になるようなことをしているのだから、当然だ。
それにたぶん俺のほうがもっと変だ。」
「う、そ。
絳攸さまは、落ち着いてらして、私ばかりなんだか乱れて行っているようです。」
その言葉に絳攸は苦笑する。
「俺が、落ち着いている?
そう見えるとしたら俺の見栄もそれなりに通用するということだな。」
そういいながら絳攸は自らもベッドの上に横になり、
秀麗の体に手を回して自らの胸元に引き寄せる。
絹糸のような黒髪を手で梳きながらさらに言葉を続ける。
「秀麗、俺の心臓の音、聞こえるだろう。」
そういわれた秀麗はそっと絳攸の胸に耳をあて、やがて驚いたように言う。
「絳攸さまも、どきどきしてる?」
「あぁ。好きな女とこういう事をするのに、緊張も興奮もして当然だろ?
だけど、俺が不安がったら、秀麗を不安にさせる。
そうしないように…、いやそれよりも男の意地だな。
秀麗にがっかりされないように俺だって必死なんだ。
だから、秀麗が変になったのが、
もしも、それが気持ちよかったというなら、俺は正直、嬉しい。」
どうだ?と問うように髪を撫でられて、
秀麗は恥ずかしげに、しかし絳攸の耳にしっかりと届くように呟く。
「あの、きもちよかったです。…たぶん。」
「…たぶん、か。」
やや不満そうな絳攸に秀麗は言い訳するように言葉を続ける。
「だって、初めての感覚で、よく、わからなくて。
でも絳攸さまに触れられていると、
恥ずかしいのに、なんだかふわふわと浮かんでいるような気持ちになって。
でも時々電気が走ったようにぞくぞくして。それに勝手に変な声もでるし。」
「秀麗。それはたぶん、気持ちいいんじゃないのか?」
絳攸に畳み掛けるように言われて、秀麗はしばしの逡巡の後こくんと頷く。
「…そうですね、たぶん。」
「そうか。よかった。安心した。」
「安心?」
「こんなことをして秀麗に嫌われないか、がっかりされないか、俺は不安だったんだぞ。」