「嫌いになるわけありません。私が何をされてもいいと言ったんですから。」
そういうと秀麗は絳攸の背中に腕を回す。
そうして恥ずかしそうに問う。
「絳攸さま、つづき、してくれますか?」
その様子を見ながら絳攸はため息をつく。
「秀麗。今日は、だめだ。悪い。」
予想外の答えだったのか、秀麗はどうして?と不安げに聞いてくる。
「……、誤解するな。俺だって続きをしたくないわけじゃない。
だけど、…ないんだ、その…、避妊具が。」
絳攸は情けないやら恥ずかしいやらでおかしくなりそうだった。
それに、自分でまいた種とはいえ、この状態でお預けは、男として辛い。
腐れ縁の友人を傍目に見ながら、
自分はそういったことへの執着は他人よりも薄いほうなのだと思っていた。
しかし、かわいい恋人を前に、自分も男だったと思い知らされる。
それでも今何も考えずに行為に及ぶことはできなかった。
秀麗を大切に思うが故に、いい加減なことはできない。
一方秀麗は、絳攸の言葉の意味を理解はしたらしい。
と同時に自分からねだるようなことを言ったことが急に恥ずかしくなってきたらしく、
赤くなった顔を隠すように絳攸の胸元に強く顔を押し付ける。
「そ、それじゃだめですね……。でも、それならどうして…。」
この中途半端な状態は秀麗にとっても辛いらしい。
だがそれについては絳攸にも言い分はあった。
「無防備だと、こういうことになるぞということだ。
あんなに言ったのに聞き分けのなかった秀麗にも非はあるぞ。」
ほかの男の前であんな無防備な姿をさらしてほしくなくて、
少々箍が外れてしまったがなという絳攸に、秀麗はまだ不満そうだ。
「絳攸さま以外にはこんなことさせません。」
「あぁ、俺以外の男の前では可愛くない女のふりをしてほしいくらいだ。」
「そう言われて嬉しいと思う私は、変ですか?」
「……いや、か、可愛いと思う。」
無意識の秀麗に反撃された絳攸は、
やはり秀麗から目を離してはいけないと再確認したのであった。
だが、秀麗の次の一言にさらに絳攸に衝撃を与えた。
「絳攸さま?」
「どうした?」
「…、今度、続き、してくださいね?」
「………、こ、今度な。」
もはや秀麗にというよりは自分に言い聞かせるように今度、今度と繰り返す絳攸であった。