桜の時 3-8

 

 
 
それをそっと拭ってやりながら、後悔の念が襲ってきた。
やはりもっと時間をかけるべきだったのだ。
絳攸の顔に浮かんだ憂いに気付いたのか、秀麗が笑いながら言う。
「絳攸さま、これは、うれし涙ですよ。
確かに、すごく痛かったですけど。
でもそれよりも嬉しいんです。絳攸さまと一つになれたんだなって。
……もし、絳攸さまが同じ気持ちでいてくださるなら、もっと嬉しいです。」
そう言われて絳攸は胸がいっぱいになった。
「あぁ、俺も嬉しい。
だけど、秀麗が嬉しいと思ってくれることの方がもっと嬉しい。
不思議だな。
これ以上ないほど秀麗のことを好きだと思っているのに、
いつの間にかそれよりももっと秀麗のことを好きになっている。」
そう言いながら絳攸は秀麗に口付けする。
 
 
 
「絳攸さま、大好きです。」
そう微笑む秀麗は、可愛くて、凛としていて、少し妖艶だ。
いつまでも二人こうして繋がっていたいとも思ったが、絳攸の限界は近かった。

「秀麗、少し動くぞ。」
「は、い。」
少しずつ腰を使いゆっくりと秀麗の中を穿つ。
最初はつらそうにしていた秀麗だったが、
次第に目がとろんとして、甘い声が漏れ始める。
それを聞きながら絳攸は次第に夢中になり動きを深く、速くしていった。
「秀麗、すまん、もう限界だ。」
絳攸がそう言ったのと、秀麗がひときわ高く啼いたのが同時だった。
二人の意識は、白い光の中に飲み込まれていった。
 
 

体に触れる手の温かさで、秀麗は意識を取り戻した。
「…あ、絳攸さま。」
先ほどまでのことを思うと、どうしても頬が赤くなってしまう。
「風邪をひかないように服を着せてやろうと思ったのだが、
起きたのなら、風呂を使うか?」
そう言われて秀麗は我にかえる。

互いの汗や何もかもが混じり合い、確かに体はべたついている。
それが先ほどまでの自分の乱れた姿をあらわしているようで急に恥ずかしくなった。
「そ、そうですね。シャワーを使ってきます。」
そう言って立ち上がろうとした秀麗だったが、
腰に力が入らず立つことは叶わなかった。
それを見ながら絳攸が笑って抱き上げてくれる。
 
 
 
                    3-9へ続く
 
 
 
 
 
 
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