桜の時 1
 
 
 
現代パロです。
女子高生秀麗と大学生家庭教師絳攸
告白済み 清いお付き合いをして1年半
秀麗の高校卒業の日です
 
 
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桜の時
 
 
 
 
白いセーラー服の彼女はとても綺麗だった。
 
3年間着古されたはずの制服は
 
そんな事を感じさせないほどに、汚れもしわもない。
 
それがまるで彼女自身のようだと思った。
 
 
舞い散る桜の中、友人たちと互いに写真を撮り合い無邪気に騒ぐ姿は、
 
常と変らず愛らしい。
 
そう思い頬に浮かぶ笑みを隠しきれないままでいると、彼女がこちらを向いた。
 
来ることは伝えていなかったから、驚かせてしまうかと思ったが。
 
視線が交錯した瞬間に、逆に驚かされた。
 
つややかで長く黒い髪も、あどけなさの残る顔立ちも、細い肢体も。
 
すべていつもの秀麗と同じはずなのに。
 
俺を一瞬で射抜いたその視線には、
 
常の彼女が身にまとうことのない色香が漂っている。
 
呼び寄せようと挙げた右手をそのままに、俺は固まった。
 
秀麗が近づいてきてようやく、己の間抜けさに気がつき、手を降ろす。
 
祝いの言葉は、何とか口にすることができた。
 
「秀麗。卒業、おめでとう。」
 
「せんせい、わざわざありがとうございます。」
 
秀麗が無事に大学に合格し、家庭教師と生徒という関係には終止符を打った。
 
にもかかわらず、秀麗は相変わらず「せんせい」と呼ぶ。
 
そう呼ぶときの彼女の顔を見ていれば、その呼び方が特別なものだと分かる。
 
親愛と尊敬のこもった瞳。
 
だが、俺は自分の中に沸いた飢渇を持て余していた。もっと、こう…。
 
「せんせい、お昼まだですか?」
 
そんな俺の気持ちには気付く様子もなく、秀麗が尋ねる。
 
「あ、あぁ。まだ、だが。」
 
そう答えると、秀麗は蕾が綻ぶ様な表情を見せる。
 
「良かったら、うちで、食べていってくださいませんか?」
 
「卒業祝いだ。どこかうまい店に連れて行ってやるぞ。」
 
「いいえ、お世話になったせんせいに、お礼の食事をご用意したいんです。」
 
そう言うと秀麗は、俺の手を引き、自宅へと歩き始めた。
 
 
 
秀麗の料理は美味だ。
 
けして贅を尽くすわけではなく、ただ、手をかけることは惜しまない。
 
そのことを感じさせる味で、秀麗の料理が好きだ。
 
遅めの昼食になったからと手早く用意されたものは、
 
パスタとサラダ・スープの簡単なもの。
 
料理の細かいことは分からないが、栄養バランスに気を配り、
 
丁寧に作られていることは知っている。
 
 
 
食事が終ると秀麗が入れてくれたお茶を持って、秀麗の部屋へと移動した。
 
机の一つ、本棚に綺麗に並べられた参考書の一つ一つそれぞれが、
 
二人で過ごした時間の記憶をよみがえらせる。
 
秀麗は、本当によく頑張った。
 
「本当はもっときちんとお礼がしたかったのですが…。」
 
恥ずかしそうに言う秀麗に、心のままを告げる。
 
「俺は秀麗の料理が一番好きだ。」
 
恥ずかしそうな表情はそのままに、
 
その瞳に喜びが宿ったことが見て取れて、そんなところも可愛いなと思った。
 
そして改めて言う。
 
「秀麗、卒業おめでとう。」
 
「ありがとうございます。でも今日は、せんせいのお祝の日でもあるのですよ。」
 
「俺の、祝い?」
 
意味が分からずに考えていると、秀麗は悪戯っぽく笑った。
 
「はい。私の家庭教師を全うしてくださった、先生の卒業式でもあるのです。」
 
「俺の、卒業式か。」
 
「はい、せんせい、おめでとうございます。」
 
そう言うと隣に座る秀麗が肩にそっと頭を寄せてきた。
 
いつもは恥ずかしがる秀麗が自分から触れてきたことが、何よりもうれしい。
 
だが、先ほど胸に生まれ出た飢渇感。もっともっとと欲する声を自らの内に感じる。
 
 
 
 
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