Strawberry shortcakes 紅家
 
※李姫夫婦設定
※黎深は当主で貴陽にいます
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Strawberry shortcakes~絳攸と秀麗と黎深と百合の場合~
 
 
 
紅州。
その地は豊かな土壌と温暖な気候で、そこに住む人々を暖かく包み込む。
 
彩雲国の米蔵と呼ばれるそこでは、米などの穀物をはじめ、農作物の栽培が幅広く行われている。
また、甘くそして剥きやすく改良された名物の蜜柑をはじめ、
果物の栽培もまた、紅州の大きな財源となっている。
 
そんな紅州で今年は苺が豊作だという報告と共に、
件の苺そのものが届けられたのは、昨日のこと。
貴陽紅家別邸でも食べきれぬほどの量に、
ひとまず料理上手な嫁を息子と共に呼び寄せたのは、当主夫人の百合であった。
 
「うわぁ~苺を見て圧巻という日が来るとは思っても見ませんでした。」
「そうなのよ。
なんというか紅家って加減をわかってないと思うところが多々あるのよね~。
特に男どもは。黎深なんかその代表格よ。」
「……確かに、ウチの父も時々そんな感じです…。」
そういうと秀麗は百合と顔を見合わせ、溜息をつく。
 
「半分くらいは、おすそ分けで皆さんに消費していただくとして、
残りは私たちで何とかしないといけませんね。」
「そうなのよ~。
それなのに黎深ったら、スモモのほうがいい、そのまま食べるのは飽きたとか我儘言ってね。
秀麗ちゃんが手を加えてくれればきっと食べるから、ちょっと手を借りてもいいかしら?」
「はい、もちろんです。じゃあ、とりあえずケーキとジャムでも作りましょうか。」
「…、私は、ジャムの担当のほうが良さそうね。」
「では私は、ケーキを作りますね。」
台所には、女人二人の楽しげな声が響いている。
 
 
そして、その入り口付近に、怪しい人影が二つ。
「…なんで俺まで覗きみたいな真似をしないといけないんですか?」
「あぁ~秀麗は相変わらず可愛いなぁ。まったくなんでお前なんぞの嫁になってしまったんだか…。」
「じゃあ、主上か藍家に嫁に出したほうが良かったですか?」
「そんなものは問題外だ。」
「じゃあ俺で我慢してください。晴れて秀麗の義父になったんですから。」
もう何度と無く繰り返された会話で、絳攸も飽き飽きしている。
それよりも。
 
「百合さんが台所に立つ姿は新鮮だなぁ。」
大好きな秀麗と大好きな百合さんのツーショットに絳攸はなんだか嬉しくなる。
「絳攸。百合はやらんぞ。」
「は?何言ってるんですか?それなら秀麗に近づくのもやめてもらいま…」
扇子が飛んできた。
 
台所の中の二人は、そんな様子を見て、こっそりと笑っている。
「本当に黎深たら素直じゃないんだから。」
「絳攸さまは、本当にお義父さまがお好きなのですね。」
このくらい泰然としていなければ、紅家生まれにして紅家の嫁なんぞ務まらないのである。
 
 
焼きあがったケーキと秀麗の入れたお茶を並べ、四人で卓を囲む。
「シンプルにショートケーキにしてみました。」
「苺といえばショートケーキよね。」
「絳攸さま、お味、どうですか?」
「黎深?涙流してないで食べなよ。」
「美味い、が。秀麗、口を開けろ。」
「はい、絳攸さま、なんです…」
振り向いた秀麗の口にぽんっと苺が放り込まれる。
「秀麗は、苺が好きだろう。」
「でも、これ、絳攸さまの分…。」
「俺はお前の焼いたケーキで十分満足だ。だから苺はお前にやる。」
見つめあい、頬を染める二人。
 
目の前で二人の世界を繰り広げられた百合は、
絳攸の変貌ぶりに驚きつつも、自分の夫を見遣る。
相変わらず、秀麗手作りのケーキに向かって涙を流している。
「ちょっとれーしん。食べないんならもらうからね。」
そう言うが早いか、黎深の目の前の皿に手を伸ばし、
苺をつまみあげるとぱくりと口に放り込む。
 
 
 
その瞬間黎深の眼から滂沱の如く流れ落ちていた涙は、氾濫をやめ、
今度はその場所に炎が立ち上る。
 
「しゅ、秀麗の、ケーキを。百合、お前。」
「なぁに?食べたかったの?」
「お、お義父さま。まだまだケーキはありますから…。」
「秀麗ちゃん、そんなに気を使わなくてもコレで十分よ。」
そういうと百合は黎深に口付ける。
「なっ、百合さん…。」
 
 
今度は絳攸が固まってしまったが、黎深の機嫌は何とか直ったようで。
「ふん、お前がそこまで謝るなら、許してやらん事もない。」などと言っている。
 
いつまでたっても新婚夫婦のような義理の父母に苦笑いしながら、
「こ、絳攸さま、もうお暇しましょう。」と夫を引きずって、自邸へと帰っていった秀麗であった。
 
 
 
     静蘭と十三姫の場合  楸瑛と珠翠の場合
 
 
あとがき、という名の言い訳
改めてみるとこの四人、揃って天然じゃないですか。
黎深を天然と呼ぶかは多少疑問が残りますが…。
今日自分のサイトのチェック(誤字脱字リンク切れ)をしていたのですが、
ギャグは書けんと書いてありました。
最近シリアスな話上げてないことに、ちょっとドキッとしました。
でもうちのコンセプトは書きたいものを書きたい時に書き散らかすなので、
別にいいんです。…たぶん。
 
 
 
 
 
 
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