My Sweetie 黎百 後編
 
 My Sweetie  黎深×百合姫 後編
 
 
 
はたして、黎深は室に一人、不機嫌そうに座っていた。
 
彼の傍らには琵琶。
 
その姿を見た百合は、自然と笑いが零れる自分に気づいた。
 
「何がそんなに可笑しい?」
 
黎深は不機嫌さを隠そうともしないまま問うてくる。
 
「何でもない。ね、黎深、琵琶弾いてよ。」
 
「お前がそう頼むなら、特別に弾いてやらんこともない。」
 
「それでね、それが終わったら黎深に膝枕もしてほしいな。」
 
「まぁ、お前が頼むのだからいいだろう。」
 
「ねぇ黎深。好きだよ。」
 
「そんなことは言わずとも分かっている。」
 
照れ隠しのようについと横を向き、琵琶の音に狂いがないか確かめ始めた黎深を見て、
 
百合はもう一度破顔した。
 
不器用な黎深がくれた、不器用な家族。
 
けれど、精一杯のやり方で、自分を幸せにしてくれる温かい家族。
 
琵琶の用意ができたのか、黎深がこちらを向いた。
 
「さっきから、何を笑っている?」
 
「ん?いや、幸せだなと思って。」
 
「お前はそんな当たり前のことで笑うのか。相変わらずおかしい奴だな。」
 
そういうと黎深は琵琶を爪弾き始めた。
 
黎深、君は分かっていないよ。
 
幸せが当たり前だってことがどれだけ幸せかを。
 
そう思いながら百合はただ、琵琶の音に耳を傾けていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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