「絳攸さま、どうなさいましたの?」
秀麗は堪りかねて遂に夫に声をかけた。
彼女の愛しい旦那さまの様子がおかしい。
昨夜からずっと、そわそわしている。
その理由もだいたい察しはついているので、昨日声をかけるわけにはいかなかった。
だが、今日になっても、夫はそわそわと落ち着かず、
かといって何かを話しかけてくるわけでもない。
だから、秀麗から声をかけた。
「しゅ、秀麗、その、なんだ。あの。」
ようやく口を開いたものの夫の発する言葉はまったく意味をなしていない。
それどころか、うろうろと歩き回ってますます様子がおかしい。
秀麗は、そんな夫の様子を微笑ましく思いながら、再度声をかけた。
「絳攸さま、落ち着いてくださいませ。お茶をお入れしましょうか?」
その言葉に絳攸ははっとした。
「い、いや、いい。今日は、俺が茶を入れる。秀麗はそこに座って待っていろ。」
そういうと絳攸は室を出て行った。

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